楽観的日和見主義

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県立大野病院事件、医師に無罪判決―福島地裁

 福島県大熊町の県立大野病院で平成16年、帝王切開手術を受けた女性=当時(29)=が死亡した事件で、業務上過失致死と医師法(異状死の届け出義務)違反の罪に問われた産婦人科医、加藤克彦被告(40)の判決公判が20日、福島地裁で行われ、鈴木信行裁判長は無罪(求刑禁固1年、罰金10万円)を言い渡した。
http:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080820-00000924-san-soci//

 私個人としては、今回の判決は妥当であると感じました。
 まとめると、女性は前置胎盤という珍しい妊娠形態であり、そしてさらに子宮と胎盤が異常な形で癒着した癒着胎盤でもあったということです。子供は無事に生まれましたが、この癒着胎盤を剥がそうとして大量出血、死亡に至ってしまったということです。

●そもそも前置胎盤とは何なのでしょう?
本来、胎盤というのは子宮底(子宮の上の方)にあるものなのですが、前置胎盤というのは子宮口付近に位置する胎盤のことです。
正常前置
↑絵に描いてみた。ご覧の通り、子宮口付近にあると出産のとき出血の恐れがあるので帝王切開なんですね。ちなみに位置によって3種類ありますがここでは割愛。
 この前置胎盤自体は珍しくもなく、割とよくある異常妊娠です。これで普通に出産している方もいます。
問題は癒着胎盤ですね。

●癒着胎盤とは?
胎盤の絨毛組織が母体子宮の筋層に侵入している状態のことです。胎盤が子宮から剥離せず、積極的な医療的介入を行わない限り出産の進行が不可能となります。
ちなみに出産前に判断することは不可能です。これは前置胎盤よりもかなり稀なケースです。

 このような困難例では、誰が執刀しても助かったといえる保障はなかったように思います。患者の希望、輸血、心停止のタイミング、さまざまな要因が積み重なった結果なのではないでしょうか。
 最近では医療も随分と進歩し、出産=安全と考える方が多いようです。しかし、100%安全な出産という者は存在しません。何も出産に限った話ではありませんが、特に分娩というものは、いつ何が起こってもおかしくないのです。全てが正常で順調に進んでいた妊婦さんでも、出産時に死亡してしまった例はあります。大変残念ですが、これは生きている人を相手にしている以上仕方のないことです。
 遺族の方の苦しみもわかりますが、出産にリスクは付き物です。医療者が最善を尽くすのは当然のことですが、医療を受ける側もそれを忘れないでいて欲しい、と思いました。
 更に、この事件をきっかけとしたかどうかは別として、産婦人科医が年々減少を続けているという事実があります。
産科
小児科も減少して久しいですが…。特に地方は医師不足が深刻です。
安心してお産もできない、産んでも診てくれる病院がないでは、日本の出生率は絶望的になってしまいます。それどころか、明らかな違法行為を行ったわけではない医師が逮捕・起訴されてしまったなら、医師数そのものが減少し、医療施設もどんどんなくなり、そうなれば日本に将来はないでしょう。

 一応看護学生として…。
 直接的な医療行為ではありませんが、患者さんに触れさせていただく時は、ほんの些細なことでもドキドキして、本当にハラハラものです。実際に手術や分娩に立ち会うドクターは、更に強い心積りや覚悟が必要となります。命に関わることですから。だから今回のようなことは、本当に大きな影響を医療界に与えたと思います。実際に、福島県内の産科の医師が減ってしまったのは事実のようですし。医師も人間ですから、善意で行っている医療行為で逮捕されるのであれば辞めてしまおう、という気持ちになるのは当然のことだと思います。もちろん、患者を食い物にする医師というのも存在しますが…。
 加藤医師は、今回のような事件があってもなお、臨床に立ちたいとおっしゃっています。本当に立派な決断だと思います。

参考リンク
・お産SOS(周産期死亡率) 河北新報社
http://blog.kahoku.co.jp/osansos/2007/06/post_53.html
・ある産婦人科医のひとりごと:周産期死亡率
http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2006/03/post_6cf4.html
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コメント


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医療と言うものは本来何らかの危機を生じている人を対象にするものです。
ですから救われる人と救われない人が必ず生じます。
救われないことが医師の責任、と言うような風潮をマスコミが作り上げてきたように思います。
また、先進国中最低レベルのGDP比医療費割合で世界一の長寿と世界一低い周産期死亡率を達成した日本の医療そのものも皮肉なことに医療は安全で当然と言う錯覚を引き起こしてしまったのかもしれません


たとえ話としては病気や怪我は火事のようなものです。
火事が起こったら消防士は災害を最小限にとどめようと必死で消火活動に勤めるでしょう。
それでも不幸なことに焼死する方がいらっしゃいます。
 それが世間や遺族が消防士に責任を問い、消防士を罵倒するとすればどうでしょう。

るーすけ | URL | 2008年08月21日(Thu)23:55 [EDIT]


コメントありがとうございます。
本当にそうですね。医療の発達、周産期死亡率の低下によって「助かる=当然のこと」として根づいてしまっているというのも、皮肉なものです。少し前には「たらい回し」もやたら報じられていましたね。冷静に考えれば、妊娠の進行状況も身体の状態も感染症の有無もわからない状態でいきなりさぁ産めというのも無理があります。マスコミの責任というのも避けては通れない問題だと思います。

火事の例えだとわかりやすいですね。いろいろ考えてしまう事件でした。

mitu | URL | 2008年08月22日(Fri)10:00 [EDIT]


 

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