楽観的日和見主義

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【ss】幽霊

 ふわふわと浮わついた足でアスファルトを歩く。やることがないのでいつものように学校へ向かった。
 あたしが生きている間通っていた学校。桜は散ってしまったけれど、鮮やかな新緑が溢れている。この木の下は涼しくて気持ちが良かった。
 影のないあたしはふわふわ、校舎へ向かった。

 あたしが使っていた机には今日も花が飾ってある。白くて綺麗な花は毎日、ちゃんと水が変えてもらえているみたい。クラスのみんなとはあまり話さなかったけど、ちゃんとお花を用意してくれるなんて。本当はもっと喋りたかったなぁ。
 隣の席の子はユミちゃん。ふわふわの髪の、明るくて可愛い子。文具を貸してくれたり、一緒にお昼を食べたり、仲良くしてくれた子。
「おはよう、ユミちゃん」
 話しかけてみたけど、ユミちゃんは後ろの席の子と楽しそうにおしゃべりしたまま。ちょっと悲しいけど、仕方ないよね。
 あたしが机と机の間をすり抜けても、誰も気にとめない。気まぐれに挨拶してみたけど、誰も顔を上げない。やっぱり気づかないみたい。見える人が一人くらいいてもいいんだけどなぁ。
 クラスメイトの大塚くんが、ちょっとだけ遅れて教室に入ってきた。大塚くんは毎日遅刻してくるし少し派手だけど、格好よくてクラスでも目立つ。大塚くんがお花の水を変えてくれるのを、あたしだけが知ってる。本当は優しい人なんだろうな。
「大塚くん、いつもありがとう」
小さく呟くと、大塚くんがこちらを振り向いた気がした。あたしは小さく笑って、ふわふわしたまま教室を出た。

「マジキモい、何ありがとうって」
「なんか最近おかしいんだよあいつ、ニヤニヤしてさぁ」
「ユミ、また話しかけられたんだけど~。怖いし~」
「筆箱隠したりジュースパシリさせてた割に好かれてんよなぁ~」
「大塚だって~!お花のお礼言われてたじゃん!キャハハハ」
「うわっ、マジ吐くわ!」


 あたしは誰にも気づかれず、気にもとめられないまま、ずっとふわふわ漂い続けている。
 誰もあたしを見ないし、話しかけても返事はない。
 ちょっと悲しいけど、幽霊だから、仕方ないよね。
スポンサーサイト

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

 

トラックバック

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。